サーキュラーエコノミーは世界トレンド!何から始めればよいか理解しよう

サーキュラーエコノミーという言葉を聞く機会が増えましたが、「何から始めればよいか」が分からずに悩んでいる人も少なくありません。日本ではまだ浸透度が低いサーキュラーエコノミーですが、従来型経済に代わる新たな経済モデルとして世界的なトレンドになってきています。ここでは、「何から始めればよいか」の理解に役立つサーキュラーエコノミーの意味や現状などを解説します。

サーキュラーエコノミーとは何?

サーキュラーエコノミーは日本語では「循環型経済」と訳されています。循環型経済で主に循環させるのは資源です。従来型の経済システムでは、限りある資源を採掘して大量に生産・消費した物を大量に廃棄するという一方通行型の経済が主流でした。こういった経済のことを直線型経済システム(リニア型経済システム)と呼びます。一方のサーキュラーエコノミーでは、直線型経済システムで廃棄されていた製品や原材料を貴重な資源ととらえ、新たな製品を作るための原材料として再利用します。

サーキュラーエコノミーは世界的にスタンダードな経済モデルとして認識されていますが、日本で取り組んでいくためには、国や自治体からの押しつけだけでは円滑に進まない可能性があります。サーキュラーエコノミーの実現には、国・自治体・メーカー・小売・消費者・回収業者といった、さまざまな組織・団体や個人の理解と協力が欠かせません。このように立場の異なる人々が環になって連携することによって、サーキュラーエコノミーという新たな経済モデルは実現するのです。

3Rとの違いは?

サーキュラーエコノミーとコンセプトが似ているシステムに3Rがあります。ただ、この2つには大きく異なる点があります。ここでは、3Rとサーキュラーエコノミーの違いを解説します。

3Rの考え方

3Rは資源の使い方に関する考え方のことです。環境省が「3Rキャンペーン」として推進し、企業や国民に対して積極的な取り組みを促している政策の1つでもあります。3Rは次の3つの考え方によって成り立っています。「Reduce(減らす)」は、ゴミをなるべく減らすことを目指す取り組みです。そのため、企業には生産段階から廃棄物の削減を考慮した製造・加工・販売を要求し、消費者にはものを長く大切に使い不要な物を買ったりもらったりしないことを求めています。

「Reuse(再利用する)」は、「再び使える製品は何度も繰り返して使おう」ということです。シャンプーや洗剤は詰め替えタイプを購入し、洋服などは家族のお下がりをもらい、不要になったものは必要な人に譲ることで誰もが実現できる取り組みであるとされています。「Recycle(リサイクル)」は、再使用できずに廃棄されたものを再生して再び資源として利用することです。消費者にはゴミをきちんと分別し、なるべくリサイクルされた製品を購入することが求められています。

サーキュラーエコノミーの考え方

サーキュラーエコノミーについては世界的な推進団体エレン・マッカーサー財団(イギリス)によって、「廃棄物と汚染を生み出さない設計やデザインを行う」「原材料と製品を長く使い続ける」「枯渇しがちな自然のシステムを再生産する」という3原則が示されています。「廃棄物と汚染を生み出さない設計やデザインを行う」とは、3Rを大前提として設計やデザインを行うことです。「原材料と製品を長く使い続ける」とは、製品完成後もメンテナスを行って製品寿命を伸ばし、リース・シェアリング・AI・IOT活用によるサービス化を実現することです。また、資源の劣化に応じた部品などを多段階に活用(カスケード利用)することで、資源効率を高めて製品の長期化を実現することができます。

「枯渇しがちな自然のシステムを再生する」というのは、生産者が自主回収などでリサイクルを推進して資源の有効活用と廃棄物の削減を図り、新たな資源の投入を抑制するという考え方です。その結果、地球規模で天然資源への負荷を軽減することが可能になります。

2つの考え方の違い

3Rは廃棄物を出すことを前提としています。ある程度の廃棄部は許容し、「なるべくゴミを出さないように努力しよう」という考え方です。そのため、3Rには生産段階で廃棄物を出さないという考えはありません。従来の直線型経済システムの中で製造されたものを大切に使い、「再生できるものだけを利用して、なるべくゴミを減らそう」というのが3Rのコンセプトだからです。一方のサーキュラーエコノミーは、企画段階から廃棄物が出ない製品を目指していて、貴重な資源のロスは限りなくゼロに近づけるという考え方を基本にしています。

つまり、出たゴミをどうするかではなく、そもそもゴミを出さないことを大前提としているのです。それは、サーキュラーエコノミーの根底にある地球環境や生活環境、また社会に負荷を与えないという考え方に基づいた確固たる使命なのです。

サーキュラーエコノミーが必要な理由

従来の直線型経済システムでは、地球の持続可能性は環境・社会両面で遅かれ早かれ限界に達します。たとえば、2050年の世界人口は98億人(国連推計)に達し、2060年の一人当たり所得平均は4万ドル(OECD推計)に達するとされています。このように世界人口が増えて発展途上国の所得水準が上がると、豊かさを享受する人々の数が増えることも覚悟しなければいけません。先進国が豊かな生活を維持しつつ新たに発展途上国の人々も加わるとなると、より多くの資源が必要となります。ただし、地球に埋蔵されている天然資源には限りがあるため、地球規模の資源不足が起こることに議論の余地はありません。

また、将来的な資源不足は人口増加だけが原因ではありません。効率重視の直線型経済システムによる資源の無駄遣いや使い捨て文化は、結果として大量廃棄につながります。このような社会システムが生み出したのが、二酸化炭素に代表される温室効果ガスが原因の地球温暖化、木材の伐採や焼畑農業などによる熱帯雨林の破壊、プラスチックによる海洋汚染といった環境問題です。このような事態に対応するためには直線型経済システムに代わる、環境・社会両面で持続可能性が高いサーキュラーエコノミーのような経済モデルが必要になります。それはまた、継続的な経済成長のためにも必要な考え方なのです。

実際に行われているサーキュラーエコノミーの取り組みは?

サーキュラーエコノミーは世界各地で具体的な取り組みが行われています。ここでは、ヨーロッパ諸国と日本の取り組みを解説します。

ヨーロッパ諸国の取り組み

サーキュラーエコノミーはもともとヨーロッパで生まれた経済モデルです。日本よりも早い頃からヨーロッパ各国や地域では、具体的な取り組みが行われてきました。たとえば、EUでは2015年12月の欧州委員会(EC)において、サーキュラーエコノミーの実現に必要な政策や行動計画をまとめた「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を採択しています。また、ヨーロッパ主要国であるイギリス・フランス・ドイツ・オランダ・フィンランド・スコットランドなどが次々とサーキュラーエコノミーを100%実現するために必要な計画と行動指針を策定してきました。主な内容は、「再生プラスチック使用の促進」や「資源の廃棄に対する罰則」などです。

なお、ヨーロッパ主要国では計画や行動指針のほかにも、2025年や2050年といった期限を設定した上で、さまざまな施策を制定しています。よく知られているのは、オランダが設定した「2050年までにサーキュラーエコノミーを100%実現する」という目標です。なお、サーキュラーエコノミーはヨーロッパを中心に発展している経済モデルであるため、これら各国の取り組みは他の地域の国々からも注目を浴びています。

日本での取り組み

日本では環境省の主導で3Rを推進してきました。そのため、サーキュラーエコノミーへの取り組みに対しても3Rが前提となっています。具体的には、1991年と1999年に施行された「再生資源利用促進法(環境省)」と「循環経済ビジョン(経済産業省)」を基本にしながら、サーキュラーエコノミーに移行する準備を行ってきています。とはいえ、2020年5月に「循環型経済ビジョン2020(経済産業省)」が発表されたばかりで、やっと具体的な取り組みが始まった段階でもあるのです。そんな中でも、民間レベルでサーキュラーエコノミーに取り組んでいる企業はあります。ただし、あくまで企業レベルでの取り組みであるため一部の意識の高い企業に限られており、業界によるばらつきが見られるのが現状です。

身近な具体例は?

ヨーロッパをはじめとする海外では、サーキュラーエコノミーという考え方が進んでいます。先進地域のヨーロッパでは多くの国の政府や自治体がサーキュラーエコノミーを政策の軸に据えているほどです。海外に比べてサーキュラーエコノミーという考え方が浸透していない日本では、ナイキ・アディダス・ユニリーバといった海外企業の取り組みを目にする機会が多くなっています。よく知られているのはオランダのフェアフォンで、自社で開発・製造するスマートフォンのパーツをモジュール化(単純化)しているため、ユーザーが簡単に部品の交換やアップデートできます。このモジュール化によって保有期間が長くなることから、製造時の二酸化炭素の排出量や廃棄物の量を削減することが期待できるのです。

もちろん、日本でも取り組みを始めた企業があります。日本企業の特徴は、脱プラスチックを製品開発に取り入れている企業が多いことですが、アパレルや生活用品を製造・販売する企業でも独自の取り組みがあります。たとえば、ファーストリテイリング(ユニクロ)では、不要になったダウンなどの商品を回収して新たな服へと蘇らせる「RE.UNIQLO」という取り組みを推進しています。また、独自の再資源化に取り組んでいるのがユニチャームです。ユニチャームでは使用済み紙おむつを回収して洗浄やオゾン処理などを施した上で、バージンパルプ並みの衛生的なパルプへの再資源化に成功しています。この取り組みによって、使用済み紙おむつを廃棄・焼却して新たなバージンパルプから製品を製造するよりも、温室効果ガスの排出量を87%程度削減することができるとされています。

スマホの再資源化にはユーザーの協力が必須

保有率(世帯)が84.3%(総務省調べ)と高いスマートフォンですが、リサイクルのための回収率は低い状態が続いています。今後、日本でもサーキュラーエコノミーへの取り組みは加速するはずですが、そこにはスマートフォンのリサイクルも含まれます。そのため、どれだけ多くの人がしっかりデータ削除を行った上で再資源化に協力できるかが、日本のサーキュラーエコノミー推進の鍵を握っているといえます。