iPhoneのバッテリー膨張は危険!対処法・処分法を解説

iPhoneなどのスマートフォンやタブレットに使われているリチウムイオンバッテリーは、劣化すると膨張することがあります。消費者庁に寄せられる発熱・発火などによる被害は増加傾向にあり、注意が必要です。この記事では、主にiPhoneユーザーに向けて、バッテリー膨張の予防策や膨張したときの適切な対処、修理、処分の方法について紹介します。

リチウムイオンバッテリーとは

リチウムイオンバッテリーは充電によって何度も繰り返し使える2次電池です。1990年代に登場して以来、乾電池、ボタン電池などの使い切りの1次電池に代り、日常生活に急速に普及してきました。コンパクトで耐久性があることから、スマートフォン、ノートパソコンなどの利用に欠かせません。また、高電圧・大電力を実現できることから、電気自動車や大型の産業用機器などのバッテリーとしても活用されています。

リチウムイオンバッテリーは、正極材・負極材・セパレータ・電解液などで構成されます。リチウムイオンが電解質を通って正極材と負極材を行ったり来たりすることで、エネルギーを貯めたり使ったりできる仕組みです。しかし、リチウムイオンバッテリーが劣化すると、電解質が分解されてガスが発生します。それがバッテリーに留まることによって膨張するのです。

バッテリーが膨張すると何が問題?

「まだ使えるから大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、バッテリーが膨張すると重大な事故につながることもあります。バッテリーが膨張することで生じる症状やトラブル事例などを解説します。

バッテリー膨張時に出てきやすい症状

バッテリーが膨張を起こしている際に出やすい症状の1つ目は、充電してもすぐにバッテリーがなくなってしまう、充電しても電源が入らないなどです。この症状はバッテリーが劣化したことによって蓄電できなくなるのが原因です。十分な電気を供給できないことから、タップしても反応しなくなるなどの現象が出ることもあります。2つ目は、充電するとすぐに100%になったり、0%から20~30%に充電されるのが非常に早くなったりする症状です。また、バッテリーが100%のまま変わらないこともあります。この原因は、劣化または故障、初期不良によって電気量が正しく計測できないことです。そのため、通常、残量表示だけでなくバッテリーとしても正常に動作しません。

3つ目は膨張したバッテリーにディスプレイが押し上げられて浮くという症状です。これはリチウムイオンバッテリーの劣化が進んでおり、発熱・発火につながりかねない危険な状態です。すぐに使用を止め、修理や処分を考えましょう。また、本体に変形が見られなくても、バッテリー周辺の温度が高いと感じた場合は注意が必要です。

膨張したバッテリーを使い続けることで起こりうるトラブル

膨張したバッテリーを使い続けると、発熱・発火を伴います。iPhoneであれば背面の左半分がバッテリーで占められており、バッテリー付近だけでなく、本体全体が発熱しているように感じるでしょう。機種によっては本体ボタンが熱くなることもあります。発煙、発火が起きることもあるので注意が必要です。消費者庁に寄せられたスマートフォン関連の報告によると、「胸ポケットのスマートフォンが熱くなり、外に投げたところ突然発火した」という事例があります。「充電中に煙が出て発火した」「かばんの中に入れていたバッテリーが破裂した」などの事例もあり、バッテリー膨張は身近に起こりうるトラブルの1つです。

また、異臭が出ることもあります。臭いの元はリチウムイオンバッテリーの電解液です。電解液が漏れた甘い臭いがしたら、バッテリーが膨張していることを疑いましょう。アンモニアのような刺激臭でないだけに、人によっては感じにくいかもしれません。リチウムイオンバッテリーの電解液は、消防法で指定されているほどの危険物です。触っただけでも人体に悪影響が出るので、液漏れがある場合には取り扱いに十分気を付ける必要があります。

リチウムイオンバッテリーが膨張する理由とは

リチウムイオンバッテリーが膨張する原因は複数あります。ここでは、充電しながら使用すること、バッテリーの寿命、初期不良の3つについて解説します。

充電しながら使用する

iPhoneを充電しながら使うとバッテリーの劣化を早めてしまい、バッテリー膨張のリスクが増します。充電と放電を同時に行うと、リチウムイオンバッテリーに負荷がかかってしまうからです。リチウムイオンバッテリーは、リチウムイオンが正極から電解質を通って負極に移動することで充電されます。一方、負極に蓄えられていたリチウムイオンが正極に移動すると放電されます。相反する動きを同時にするとバッテリーを痛めやすくなってしまうので、充電しながらiPhoneを使うのはできるだけやめましょう。

寿命が近づいている

Appleの公式サイトによると、初期状態の80%以上のバッテリー容量を維持できると保証されているのは、フル充電で500回です。500回と聞くと少なく思えますが、バッテリーが0%の状態から100%にしたときを1回にカウントします。一般的な使い方では、1年間以上は問題ないでしょう。自分で判断するのはむずかしい面がありますが、充電回数500回を超えて最大充電量が初期状態の80%を下回ってきたら交換時期です。バッテリーの持ちに関して不満が出ない期間の目安は2~3年と言われています。なお、上記のApple公式サイトの記述は、2021年3月31日時点のものであり、過去のiPhone端末には当てはまらない可能性があります。

初期不良品だった

購入したiPhoneのバッテリーが運悪く初期不良品ということもあります。Appleではもし1年以内でバッテリーが劣化したら、Apple製品1年限定保証の対象になります。おかしいと感じたら早めにAppleに連絡しましょう。ただし、複数のアプリケーションが起動しており、電気の消費量が多い場合もあるので、低電力モードなどに変えて試してみることも大切です。また、CPUなど他の部品が故障していて電気の消費量が多くなることもあります。

長持ちさせるために気をつけることとは

リチウムイオンバッテリーの膨張は劣化によって起きます。ここでは、劣化を早めてしまう充電や利用の仕方を紹介し、対策や注意点も解説します。

充電しながら使わない

先にも述べたように、充電しながら使うとバッテリーの劣化を早めてしまうので気を付けましょう。ゲームプレイ中や動画視聴などの際に充電しながら使っている人も多いのではないでしょうか。すぐに劣化するわけではありませんが、習慣にしてしまうと、確実にバッテリーの寿命を縮めてしまいます。

過充電・過放電しない

充電100%になってからも充電し続ける「過充電」と、0%になった状態で放置する「過放電」は劣化を早めます。そのため、過充電にも過放電にもならない20~80%の状態を保つことが、バッテリーを長持ちさせるポイントです。寝る前にスマートフォンの充電を開始して、ずっとそのままということはよくあるでしょう。しかし、80%ぐらいまで充電が終わったら、充電ケーブルを抜いておくほうが劣化を防げます。過充電を続けると異常発熱の原因となることもあるので、長期間の充電には注意しましょう。

また、使わないからといってそのまま放っておくのも、バッテリーの保管状態としてはよくありません。リチウムイオンバッテリーは自己放電する性質があるため、何もしなくても電気が減ってしまいます。すると、バッテリー容量の一部が充電する力を失い、駆動時間が短くなってしまうからです。Appleの公式サイトでは、長期保管する際は50%程度に充電してから、電源を切って保管することを推奨しています。また、半年以上使わない場合は、半年ごとに50%まで充電します。

充電回数は少なくする

リチウムイオンバッテリーは充電するごとに劣化が進むため、充電回数を減らせば、そのぶん長持ちします。回数を減らす方法の1つは、電池容量が減ったら充電するのではなく、残量が20%程度まで減ってから充電することです。バッテリーがなくなるのが不安なため、70~80%ぐらいに減ったらすぐに100%まで充電している人も多いのではないでしょうか。しかし、先に述べたとおり、バッテリーを長持ちさせるためには20~80%の間に保つことがポイントです。残量が100%近くでないと不安な人は、外出先でも充電できる予備のバッテリーを携帯するなど、工夫しましょう。

Appleが推奨している充電回数を少なくする方法も紹介します。1つ目はソフトウェアを最新のものに保つことです。アップデートしたからといって必ずしも省電力になるとは限りませんが、改良されていることもあります。2つ目はディスプレイを過度に明るくしないこと、低電力モードを上手に使うなど、バッテリーの消耗が少ない設定にすることです。3つ目はできるだけWi-Fi回線を使うことです。通信容量が無制限のプランに加入している人は、携帯電話のネットワークをずっと使っている人もいるのではないでしょうか。

しかし、消費電力の面ではWi-Fiのほうが少なく、バッテリーが劣化しません。その他、消費電力を減らす使い方を考える方法もあります。iPhoneで「設定→バッテリー」と進むとバッテリーの使用状況を閲覧できます。どのアプリケーションがどれくらいバッテリーを消費しているのかをチェックして、利用方法を改善しましょう。

適切な温度下で扱う

一般的には、充電時は0~40度、放電時は0~60度の温度が推奨されています。極端な高温・低温に弱いため、真夏の車中や氷点下の屋外などでスマートフォンを充電、使用するのは避けましょう。Appleが推奨しているiPhoneに適した環境は、より厳しく設定されています。利用に最適なのは16~22度で、35度以上になるとバッテリー容量に悪影響が出る可能性があるとしています。また、周囲の温度が高い状態で充電するのは、深刻な損傷が起きるリスクがあるとのことです。

バッテリー膨張によるトラブル事例のなかには、ポケットやかばんに入れていたケースが多くあります。発熱、発火に気づくのが遅れたこともありますが、温度が高くなりやすい環境も関係しているのでしょう。iPhoneは温度の気配りをしていないと、少なくともバッテリーを劣化させてしまうことにつながります。たとえば、直射日光が当たる場所で日々充電していれば、バッテリーを劣化させてしまい、重大なトラブルにつながるかもしれません。

保冷剤で冷やさない

本体が熱くなった場合は、使用しているアプリを止めたり電源を切ったりして、涼しい場所で冷えるのを待ちましょう。保冷剤で強制的に冷やすとバッテリーの故障や劣化につながるばかりか、本体が故障することもあります。バッテリーは極端な低温に弱いうえ、急激な温度変化にも耐えられません。また、スマホ内に結露が発生することで、本体内のさまざまな部品が壊れるリスクがあります。スマホ用の保冷剤ならかまわないのではと思っても、Appleの純正品でない以上、使用した際の保証はありません。

バッテリー膨張時の対処法

バッテリーが膨張したときには、いくつか対処法があります。バッテリーが膨張したときの一時的な対策は、放電させることです。また、現在のiPhoneを使い続けたい場合は、修理に出す方法と自力でバッテリーを交換する方法があります。iPhoneを手放してよい人は処分を検討しましょう。それぞれについて解説します。

電源を落とし放電する

バッテリーが膨張していることに気づいたら、すぐに使用をやめて電源を落としましょう。自然にできるだけ放電すると、発火や破裂などのリスクが低くなります。また、衝撃や圧力が加わると破損や発火などに至ることもあるので、取り扱いには注意が必要です。安全であることを確かめてから修理するか、本体ごと処分するか決めましょう。

修理に出す

修理に出す場合は、Apple直営店・正規修理店かキャリアショップ、街のスマホ修理店のいずれかになります。それぞれの特徴を紹介します。

Apple直営店・正規修理店に依頼する

Apple直営店・正規修理店に依頼するメリットは、正規店なので安心できることです。Apple製品限定保証やAppleCare+の保証対象である場合は、そのiPhoneのバッテリーを無償で交換可能です。実店舗では持ち込みにも対応しています。配送修理に出したい場合はAppleリペアセンターに連絡すると指定業者が取りに来てくれます。デメリットはリペアセンターの場合、修理に5~7営業日程度かかることです。また、iPhone内のデータも自分でバックアップしておく必要があります。

キャリアショップに依頼する

iPhoneを購入したキャリアショップで修理を依頼することもできます。auやドコモ、ソフトバンクなどのショップが近くにある場合には持ち込んでみましょう。ただし、全ての店舗で修理に応じているわけではないので、事前に確認しておきます。キャリアショップに依頼する場合も、自分でiPhone内のデータをバックアップすることが必要です。また、「iPhoneを探す」をオフにしておく、電源が切れない場合は放電済にする、AppleのIDとパスワードを用意する、などの条件を満たしていないと受け付けてもらえません。各キャリアのサイトなどで確認して準備しておきましょう。

街のスマホ修理店に依頼する

街のスマホ修理店でもバッテリー交換を受け付けています。念のためにデータバックアップをしておくことは必要ですが、バッテリー交換のみなのでデータはそのままです。お店の状況によりますが、即日修理に対応しているところも多く、急いで直したい場合に向いています。ただし、なかには粗悪なバッテリーに交換するお店もあるので注意が必要です。信頼できるショップを選ぶポイントは、「総務省登録修理業者」の許可を得ているか確認することです。また、交換するバッテリーにPSE マークが付いているかどうかも確認しておきましょう。

処分する

次に、スマホを処分する手段として、iPhone買取業者に買い取ってもらう方法と、キャリアショップで引き取ってもらう方法を紹介します。

iPhone買取業者に買い取ってもらう

iPhone買取業者は、修理すれば使えるものを買い取っています。バッテリーが膨張していても、その他の部分に不具合がないなら、バッテリー分を差し引いた価格で買い取ってもらえる可能性があります。iPhone買取業者を利用する際には、個人情報の漏えい対策として、持ち込み前に必ず初期化しておきましょう。ただ、厳密にいえば、個人で簡単にできる初期化では、データ復元される可能性があることを知っておく必要があります。

マイナンバーなどの重要な情報がスマートフォンに入っている場合は、総務省のガイドラインにより物理破壊が推奨されています。ソフトウェアによるシンプルな初期化では、目次を消去しただけで本文は隠し領域に残ってしまっているような状態であることに注意が必要です。

キャリアショップで引き取ってもらう

キャリアショップでは買い取ってもらうことはできませんが、処分なら可能です。大手キャリアであれば機種変更の際には、通常、無償で処分してもらえます。大手キャリアの場合でも、データの初期化を必ず行っておきましょう。

自己責任でバッテリーを自力で交換する

自己責任で膨張したバッテリーを交換することも不可能ではありません。ECサイトで端末に合ったPSEマーク付きのバッテリーを入手して交換します。作業前にはデータのバックアップを取っておきましょう。自力で交換する方法では、膨張したバッテリーに衝撃や圧力が加わることによる発火や破裂などのリスクがあります。また、専用工具が必要になったり、外したバッテリーを自分で処分しなければならなかったりすることもデメリットです。家電量販店にはリサイクルBOXがありますが、膨張したバッテリーは回収対象外なので気を付けましょう。住んでいる自治体によって処分のルールが違うため、確認してから正しく廃棄します。

もっとも安全確実なのは物理的廃棄!ZAURUSに相談を

バッテリーが膨張したスマートフォンは危険です。バッテリーに負荷をかけない充電と利用を心がけましょう。膨張してしまった場合は、適切に処理する必要があります。処分する場合は物理的に破壊するのも1つの方法です。確実に個人情報の漏えいを防げます。スマホシュレッダーZAURUSなら、データ復元が不可能である、スマートフォン本体ごとの物理的な粉砕が可能です。処分したいiPhoneがある場合は、相談してみてはいかがでしょうか。