都市鉱山という言葉を聞いたことがあるでしょうか。都市鉱山と呼ばれているものの中には、普段から多くの人が利用している身近なものも含まれています。都市鉱山は、現代の日本にとって欠かせない重要な資源の一つです。この記事では、都市鉱山を適切に活用するために知っておきたい基本的なことについて解説していきます。
都市鉱山とはいったい何?
生活の中で使われている小型家電の中には、液晶や基盤、さらにリチウムイオン電池などが内蔵されているものがあります。そして、それらにはさまざまな金属が使用されています。鉄やアルミニウムなどベースメタルと呼ばれている金属もそうですが、インジウムやリチウム、チタン、クロムといったレアメタルも多く使われているのが現状です。他にも、金や銀、プラチナのような貴金属も用いられています。そもそも、貴金属やレアメタルは自然の埋蔵量も少ない金属で、それゆえに希少価値が高いものです。これらの価値のある金属が入った小型家電を、そのまま廃棄してしまうのはもったいないといえます。そのまま捨てず、中から取り出すことができれば資源として十分使うことができます。「都市鉱山」とは、こうした発想から小型家電を鉱山に見立てた言葉です。
特に、スマートフォンやパソコンなど都市部で利用されている機器類にはたくさんの金属が使われていることから、鉱山に例えてそう呼ばれています。都市鉱山には、使用中のものだけでなく資源が眠ったまま廃棄されたものも含まれています。
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日本の都市鉱山は資源産出国並み
レアメタルや貴金属は、産出国が限定されているうえに採掘できる地域も偏在しています。しかも、それが枯渇するのもそう先のことではありません。「国立開発研究法人物質・材料研究機構」では、2050年までにレアメタルや貴金属のほとんどが枯渇するという分析をしています。全体の量が少ないことに加え、それぞれの産出国の利害関係が絡むなど、資源の確保は難しいのが現状です。しかし、レアメタルにおいては、高性能モーターの磁石や充電池に用いられる電極材、さらに電子基板のコンデンサや超硬工具の超硬材などに欠かすことができません。特に幅広く利用されているのはガリウム、液晶に使われるインジウム、基盤に含まれるタンタル、リチウム電池に用いられるリチウムなどです。
そして、これらのレアメタルを含んだ部品は、携帯電話やスマートフォン、デジカメ、パソコン、テレビ、さらに医療機器や電気自動車、ハイブリッド車などの製品に使われています。日本では、どれも日常生活の中で目にすることが多い製品ばかりです。日本でも、かつては金や銀が採掘されていました。現代に至ってはそのほとんどが閉山しており、国内で採掘できる量はわずかです。しかし、日本の都市鉱山には産出国の量に匹敵するほどの資源の量が眠っています。もしくは、それ以上の量に当たるかもしれません。日本の都市鉱山に眠っている量は、インジウムは世界の現有埋蔵量のおよそ6割、スズやタンタルはおよそ1割といわれています。
都市鉱山に眠る資源量は埋蔵量ではない
実際の鉱山であれば、掘り出さない限り資源の量は変化しないままです。減ることもなければ枯渇する心配もありません。つまり、何もしなければ埋蔵量はそのまま維持されることになります。ところが、都市鉱山は既に小型家電として利用されている資源全体の量を指します。製品として散在している金属の総量が蓄積されたもので、すべてが資源として活用できる量のことを示してはいません。都市鉱山と呼ばれるものの中には、ゴミとして廃棄され、取り出されることなく焼却されたケースもあります。なかには、そのまま埋め立てられたケースもあるでしょう。都市鉱山は、これらもすべて含まれた蓄積量で、実際の鉱山のような埋蔵量とは異なります。
つまり、すべてが資源として活かされる量ということではなく、その点が大きな課題といえます。散在している重要な金属を少しでも多く回収し、資源として活用するのは重要なことです。
身近な都市鉱山と眠っている資源の種類
では、身近な都市鉱山には一体どのようなものがあり、その中にはどのような資源が眠っているのか紹介していきます。
スマホの場合
スマートフォンは身近な小型家電の一つで、貴金属やレアメタルが数多く使われています。スマートフォンは現代では1人に1台が当たり前となっていますが、部品として使われている金属の多くは近い将来に枯渇するといわれているものばかりです。例えば、液晶画面にはインジウム、ICチップには金と銀、胴、そしてスズが使われています。振動モーターにはネオジムやジスプロシウムが使われており、これらは永久磁石には不可欠なレアアースです。
コンデンサにはニッケルとチタン、パラジウム、タンタル、バリウム、さらにマンガンが使われています。そして、バッテリーを作っているのはリチウムとコバルトです。これらレアメタルの世界産出量の中で、およそ97%もの量を中国が占めています。これに対して需要が高い国は日本で、その量は世界の半分以上にものぼります。もしも、スマートフォンに含まれているそれぞれの金属を回収して再利用を行えば、スマートフォンの生産と利用は安定的に続けられるでしょう。違う言い方をすれば、どれかの金属が枯渇したらスマートフォンの製造は難しくなるということです。
パソコンの場合
パソコンは、ハードディスクとマザーボード、メモリ、CPU、電源ユニット、さらにモーターやバッテリーにレアメタルが使われています。こうして挙げてみると、パソコンの主要部品のほとんどがレアメタルで占められていることがわかります。実際に使われているレアメタルを見ていくと、ネオジムやジスプロシウム、タンタル、パラジウム、コバルト、プラチナ、そしてゲルマニウムなどです。使われている金属の種類がもっとも多いのは基盤部分ですが、だからといって量も多いということではありません。回収したところで取れるのは基盤1トン当たりで数十グラム程度といったところです。取れる量はわずかでも、採掘して精製し、さらに製品化まで行うには相応のコストと手間がかかります。
そう考えると、パソコンは貴重な金属の宝庫であると言っていいでしょう。2013年(平成25年)の4月以降、小型家電リサイクル法が施行されました。それによって、パソコンは各メーカーが責任を持って回収とリサイクルを実施することになっています。
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都市鉱山の有効利用に必要なこととは?
都市鉱山を有効利用するには、すでに使わなくなった小型家電製品を確実に回収し、集めることが重要です。単なるゴミとして焼却したり、埋め立てられたりすることがないようにしなければなりません。パソコンに関していえば、説明したように小型家電リサイクル法によってメーカーの回収が義務付けられています。2020年の実績で見ていくと、ノートパソコンの場合は6割以上、CRTディスプレイは7割以上、さらにデスクトップパソコンと液晶ディスプレイについては8割近くも再資源化が実現されています。
そして、もう一つ重要なことは、違法な回収業者に依頼しないことです。違法な回収業者は、適切な処分をせずに不法投棄を行う恐れが出てきますし、海外に輸出する可能性もあります。しかし、もっとも大きな問題となっているのがスマートフォンでしょう。スマートフォンについては回収が進まない傾向があり、2020年の回収率は17%ほどしかありません。大幅に伸びることはなく、毎年15〜17%を推移しているという状況です。スマートフォンの場合は家庭内にそのまま放置されるケースも多いですが、ゴミとして廃棄されることも少なくありません。使わなくなったスマートフォンや携帯電話については、確実に回収される方向に進めていくことが必要です。
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都市鉱山の有効利用に協力しよう
都市鉱山を有効活用するためには、ユーザーの協力が不可欠です。もっとも重要なのは、まずスマートフォンの回収率を上げることではないでしょうか。しかし、その際、スマートフォンに記録された情報の漏洩やリチウムイオン電池の発火について注意しておかなければなりません。そのためには、スマートフォンをシュレッダーにかけ、適切な処置を行ってから出すようにしましょう。
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